日本国内線にLCCが就航して4年、かなり日本市場に
馴染んで来たようにも思われますが、まだまだいろいろ
な面で利用者との間に齟齬が起きることも多いようです。
このコラムでは以前にもLCC利用の注意点などについて
考察してきましたが、ここでもう一度「まとめ」として
大胆な提言でLCC利用を見直してみたいと思います。
まずキーワードとして考えたいのは「安かろう、わけあろ
う」です。我々日本人の文化として「安いことは良いことだ。
しかし安いからと言って質を落とすことは許されない」とい
う考え方があります。いわゆる「安かろう、悪かろう」は
認められないのです。まあそれはいいと思います。「安かろう、
悪かろう」では「悪かろう」の部分を補填するためにコストが
かかって、却って高いものになると言った状況に追い込まれ
る可能性がありますから。
しかし、落ち着いて良く考えてみてください。この人間の
経済社会において「安いもの」と「高いもの」が同質であり
得るわけはないのです。もしそれが現実としておこるなら
「高いもの」を売る側は不当に大きな利益を得ているはずです。
現実から言えば「安かろう、わけあろう」というのが真実です。
ここで言う「わけ」は経済用語で言えば「デメリット」になる
でしょう。LCCの賢いユーザーとなるためには、まずこのデメ
リットを正確に把握する必要があります。
まず抑えるべきは「払い戻し不可」です。どこのLCCでも、
いちばん安い運賃種別では旅客側の理由でキャンセルしても
払い戻しはありません。航空券、搭乗券は上場廃止になった
株券と同じ。ただの紙切れになります。チェックインに間に
合わず予約便に乗れなかった場合でも同様となります。
これはLCCの基本中の基本なのですが、それさえも知らず
に予約している人が多いのも現実です。そして何かあってから
騒ぐ。よくあるパターンですが騒いでも何も戻ってはきません。
つぎに欠航や遅延の場合。この場合のケアとして考えられる
のは後続の自社便への振り替えのみ、です。他社便への振り
替えはありません。後続の、といっても何時間か後、とは限
りません。便がない、あるいは空きがないという理由で翌日、
または翌翌日ということも珍しくありません。その間の宿泊費、
滞在費も基本的には補償されません。LCCではスケジュール上
の出発時間や到着時間は契約外、となっていることが多いので
何時間遅れようが旅客側は文句の言えない仕組みになっている
わけです。欠航や遅れによって生じた交通費や駐車場の追加料金、
宿泊機関のキャンセル料などの補償も一切ありません。増してや
精神的苦痛に対する補償など論外なのです。
欠航で運賃を払い戻してもらう場合には現金ではなく、ポイント
やバウチャーといわれる「次にその会社の便を利用するときだけに
使える」金券で行われます。
次に旅客側のチェックイン遅れ。これは有無を言わせず乗せてくれ
ません。前述の通り運賃は戻りません。
またいったん予約を完了した後に、何かの都合で変更しなければ
ならない場合。だいたいどの会社も変更手数料に加えて運賃差額
という耳慣れない出費を余儀なくされる仕組みになっています。
これは元予約をした時の運賃と、取りなおした便のその時点での
運賃に金額差があれば、その差額を旅客が負担する、という制度です。
ただし差額がマイナスになってもその分が安くなることはありません。
こうした規則のために、変更を申し出たら、元の運賃の倍以上の追加
代金が必要なことがわかる、ということも珍しくはありません。
何のことはない、結果として大手航空会社より高い運賃になってしまう
笑えない状況がそこにはあるのです。まだまだありますが以上の点を
考えLCCをひと言で表現すれば、
【何もなければ安くてハッピー、でも何かおこると費用とストレスが高くつく】
ということになります。そこで少し大胆にLCC利用心得をまとめてみました。
と言うよりはっきり言って利用を避けるべき旅行、としましょう。
・変更がおきそうな旅行には使わない
絶対に遅れられない旅行には使わない。例えば
・結婚式
・重要な商談のための出張
・受験
・国際線への接続
・ギリギリでの乗り継ぎ
等には使わないこと。そしてLCCに多くを期待しないこと。
LCCといえどもほとんどのフライトは
あまり遅れもせずに飛んでいます。るるお話しした
デメリットを理解したうえで、時間とココロに余裕を
もって利用すれば、きっとハッピーな旅行になるはずです。